生活行為向上リハビリテーション実施加算とは

平成27年度の介護報酬改定から始まった生活行為向上リハビリテーション実施加算。
なかなか算定率が上がらず、令和3年度の介護報酬改定では大きなテコ入れがありました。

今回はこの加算の目的、算定方法などについて考えていきたいと思います。
算定率が上がらない原因は何があったのか、今後算定していくためにどのようなことを考え、取り組んでいかないといけないのかといったところを中心に考えていきたいと思います。

生活行為向上リハビリテーション実施加算の目的・概要

まず、生活行為向上リハビリテーション実施加算が始まった平成27年度の介護報酬改定時の加算の概要についてみていきたいと思います。

生活行為向上リハビリテーション実施加算の目的

生活行為向上リハビリテーション実施加算の概要について厚生労働省の資料では以下のように示されています。

ADL・IADL、社会参加などの生活行為の向上に焦点を当てた新たな生活行為向上リハビリテーションとして、居宅などの実際の生活場面における具体的な指導等において、訪問と通所を組み合わせることが可能となるような新たな報酬体系を導入する

社保審-介護給付費分科会第150回(H29.11.8)資料3

加算の名称のまま、生活行為を向上させるための取り組みを評価する加算ということですね。
では生活行為とは一体何でしょうか?

生活行為とは

生活行為は以下のように定義されています。

個人の活動として行う排泄する行為、入浴する行為、調理をする行為、買い物をする行為、趣味活動をする行為をいう。

厚生労働省:介護報酬の実施上の留意事項について,老企第36号第2の8(12)2015

人が生きていくうえで営まれる生活全般の行為のこと。生活全般の行為とは、セルフケアを維持していくための日常生活活動(ADL)の他、手段的日常生活活動(IADL)、仕事や趣味、余暇活動などの行為すべてを含む。

(一社)日本作業療法士協会:作業療法関連用語解説集改定第2版,2011

要するに生きていくうえで行う行為全般を生活行為と呼ぶといって差し支えないかと思います。

この書籍は実際の事例を提示し、生活行為に対してどのような支援をするのかをカラーで写真付きで解説されており、おススメです。

生活行為向上リハビリテーション実施加算の算定要件

生活行為向上リハビリテーション実施加算の算定要件は平成27年度の介護報酬改定時に以下のように定められました。

  • 生活行為の内容の充実を図るための専門的な知識若しくは経験を有する作業療法士又は生活行為の内容の充実を図るための研修を修了した理学療法士若しくは言語聴覚士が配置されていること。
  • 生活行為の内容の充実を図るための目標及び当該目標を踏まえたリハビリテーションの実施頻度、実施場所及び実施時間等が記載されたリハビリテーション実施計画をあらかじめ定めて、リハビリテーションを提供すること。
  • 当該計画で定めた指定通所リハビリテーションの実施期間中に指定通所リハビリテーションの提供を終了した日前1月以内に、リハビリテーション会議を開催し、リハビリテーションの目標の達成状況を報告すること。
  • 通所リハビリテーション費におけるリハビリテーションマネジメント加算(II)を算定していること。

生活行為向上リハビリテーション実施加算を算定するためにはリハビリテーションマネジメント加算Ⅱを算定し、必要な研修を修了した療法士が計画書を作成する必要があります。

研修については全国介護老人保健施設協会が主催する研修や、作業療法士の方はMTDLP研修などがあります。
MTDLPについては別の記事で詳しく見ていきたいと思います。

生活行為向上リハビリテーション実施加算の点数

この加算の点数は大きく、開始月から起算して3か月は2000点/月、4~6か月は1000点/月とかなり大きな加算となっていました。
しかし、6か月以上通所リハの利用を継続する場合は、翌月から6月間に限り1日につき所定単位数の100分の15に相当する単位数を所定単位数から減算する、という要件があり、少しややこしい加算となっていました。
加算のイメージ図が厚生労働省から出されています。

このややこしさも算定しにくかった要因のひとつだったのかもしれませんね。

生活行為向上リハビリテーション実施加算の算定率が上がらなかった要因

ではなぜこれだけ大きな加算の算定率が上がらなかったのでしょうか?
厚生労働省は以下のようなデータを出しています。

社保審-介護給付費分科会第150回(H29.11.8)資料3

上記のように制度が開始されてから2年以上が経過した段階でも全国で7.5%の事業所でしか算定されていませんでした。

算定できない理由については

  • リハビリテーションマネジメント加算Ⅱを未算定
  • 研修を修了している職員がいない
  • 終了について本人・家族の理解が得られない

といった理由が上位に挙げられています。
この当時のリハビリテーションマネジメント加算Ⅱは医師のリハビリテーション会議の参加(テレビ電話などは不可)が必須であったことから算定できない事業所が多くあり、それが一番の原因となっていました。
2番目に挙げられた「研修を修了している職員がいない」というのは、

研修を受けたらいいじゃん…

と思いそうですが、研修自体の開催数が少なく、また全国各地で行われているわけではなく、主要な都市でしか行われておらず、人員がギリギリの事業所ではなかなか受講できないといった事情もあったと考えられます。

新しい生活行為向上リハビリテーション実施加算

ではここからは令和3年度の介護報酬改定で大きく変わった加算要件についてみていきましょう。

加算改定の概要

生活行為向上リハビリテーション実施加算について、廃用症候群や急性増悪等によって生活機能が低下した利用者に対する、適時適切なリハビリテーションの提供を一層促進する観点から、事業所の加算を取得しない理由等も踏まえ、見直しを行う。

厚生労働省 令和3年度介護報酬改定における改定事項について

改定の理由として、より幅広い利用者を対象として多くの事業所が算定し、生活行為向上リハビリテーションに取り組めるように、という目的が読み取れます。

加算の要件

加算の要件については以下のように改定されました。

  • 生活行為の内容の充実を図るための専門的な知識や経験を有する作業療法士、生活行為の内容の充実を図るための研修を修了した理学療法士、言語聴覚士が配置されていること
  • 生活行為の内容の充実を図るための目標や、目標を踏まえたリハビリテーションの実施頻度、実施場所等が記載されたリハビリテーション実施計画を定めて、リハビリテーションを提供すること。
  • 当該計画で定めたリハビリテーションの実施期間中及びリハビリテーションの提供終了日前1月以内にリハビリテーション会議を開催し、目標の達成状況を報告すること。
  • リハビリテーションマネジメント加算(A)・(B)のいずれかを算定していること(通所リハビリテーションのみ)。
  • 指定通所リハビリテーション事業所の医師又は医師の指示を受けた理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が当該利用者の居宅を訪問し生活行為に関する評価をおおむね1月に1回以上実施すること(新規)。

リハビリテーションマネジメント加算については医師の説明を必要としないAも対象になったことで、算定する事業所が増えることが予想されます。

一方で要件が追加され、1月に1回以上居宅を訪問し、生活行為について評価することが要件として付け加えられました。
算定する側にとっては実施しないといけない取り組みが増えることになりますが、加算の目的としては理にかなっており、居宅での生活行為を実際に評価することはとても重要だと思うので、良い改定項目ではないかな、と感じました。

加算の点数

点数に関しては以前のものと比較するとシンプルなものになりました。
以下に厚生労働省から出されているイメージ図を示します。

厚生労働省 令和3年度介護報酬改定における改定事項について

加算の点数は1250単位/月、介護予防対象者は562単位/月となり、6か月算定することができ、その後も通所リハの利用を継続する場合でも基本報酬が減算されることはなくなりました。

終了しないことで施設側にマイナスがなくなり、修了に対しての意識が薄れてしまうのでは?と少し感じる改定内容となっています。

しかし算定構造がシンプルになったことで説明もしやすく、少し算定しやすくなったのではないでしょうか?

生活行為向上リハビリテーション実施加算を算定するためには

これまでこの加算の要件などについてみてきましたが、算定するために何をしたらよいのでしょうか?

まず必須前提条件として

  • 研修を受けること
  • リハビリテーションマネジメント加算を算定すること

があります。
その上で、ケアマネジャー、本人・家族に加算を算定する目的、メリットを説明し、計画書を作成することが必要です。

今回の改定で1月に1回以上居宅を訪問することが要件として加えられ、
家での実際の動作を評価し、より実践的なリハビリテーションを実施することができる
といったメリットを説明しやすくなるのではないでしょうか?

大きな点数の加算になるので、しっかりと説明し、同意を得ることが必要です。

また、算定するために生活行為向上リハビリテーション実施計画書を作成する必要があります。

計画書の書式はこちらです。

通所適応期と社会適応期に分け、そのなかで心身機能・活動・参加それぞれに対してプログラムを立案します。
通所で実施すること、訪問で実施すること、自己訓練として実施することに分けてプログラムを立案するなどかなり細かく計画を立てることが求められています。

これだけ細かく計画を立てるので、(計画を立てることは大変ですが)サービス提供側、サービスを受ける側双方にとって取り組まないといけないことや達成度がわかりやすくなると思います。

まとめ

生活行為向上リハビリテーション実施加算のこれまでの流れ、概要や算定要件などをみてきました。
かなり大きな点数の加算で細かく計画を立て、支援することが求められています。

ぜひこの加算を活用して利用者本人がやりたいことを実現できるようなサービスをていきょうしていきたいですね!

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