介護保険の持続可能性~厚生労働省の取り組み~

前回の記事では、介護保険を持続可能な制度にするために私たちにできることについて書きました。

厚生労働省は制度の改定などを行い、介護保険が持続可能な制度となるように様々な取り組みを行っています。
今回はその中である取り組みについて取り上げたいと思います。

その方法とはずばり自己負担割合を増やすことです。

自己負担とは?
聞いたことがある方も多いと思いますが、今回はその制度についてご紹介します。

介護保険の収入源はなにがあるのか

まず、介護保険の収入源について整理していきたいと思います。

介護保険の収入源は大きく以下の図のようなものから成り立っています。

介護保険 財源
平成27年度 厚生労働省 公的介護保険制度の現状と今後の役割より引用

少し古いデータにはなりますが、厚生労働省から出されているデータです。
国庫負担金や都道府県・市町村負担金などの税金と、40歳以上が納めている介護保険料が半分ずつ収入源になっていることがわかります。

次に下の図をご覧ください。

介護保険財政
平成27年度 厚生労働省 公的介護保険制度の現状と今後の役割より引用

これは介護保険の収入、支出の全体像となります。
支出の下に利用者負担と書かれているものがあります。
これが自己負担とも呼ばれているものです。

https://amzn.to/3pyaMii
https://amzn.to/2RDNhrK

介護保険の自己負担とは

介護保険サービスを利用する際、サービス利用料の全額が介護保険で賄われるわけではありません。
利用者が自己負担としてその年度の収入に応じてサービス利用料の1~3割を支払ってサービスを利用することになります。

介護保険が創設された当初(平成12年)は自己負担割合は一律一割負担と決まっていました。
それから少子高齢化は急激に進み、当初と比較すると高齢者人口は約1.5倍に増え、総人口に対する割合も17.4%から28.7%と急激に高まっています。

厚生労働省はこの介護保険の自己負担割合に関して2度、制度の改定を実施し、2015年8月から2割負担、2018年8月からは3割負担の枠を作り、利用者の収入によって負担割合を変化させるような制度になりました。

この自己負担割合は前年度の所得額や家族構成によって基準が決められています。

介護保険での自己負担割合の所得の基準とは

それでは自己負担割合の基準についてみていきましょう。

まず、本人の所得総額によって区分されます。
所得総額が160万円以下の場合、160~220万円の場合、220万円以上の場合の3つに区分されます。
次に同一世帯に65歳以上の人数が何人いるかによって所得の基準が設けられ、自己負担割合が決められています。

文章にするととてもややこしいので、以下の図を参照してください。

介護保険 自己負担

私たち理学療法士、作業療法士、言語聴覚士がここまで正確に覚えておく必要性は低いかとは思いますが、このような制度で負担割合が決められている、ということは知っておいて損はありません。

介護保険での自己負担3割の対象者はどれくらいいるのか

では実際に自己負担割合3割の高齢者はどれくらいいるのでしょうか?

厚生労働省の推計によると利用者全体の約3%にあたる約12万人が3割負担の対象者だといわれています。
もちろん地域によってその割合は変わってくると思いますが、全国でおよそこれくらいの利用者が3割の自己負担金を支払いながらサービスを利用していることになります。

この制度では前年度の所得に応じて今年度の負担割合が決められます。
例えば、土地を処分(売って)前年度の所得が基準の所得額を超えたとき、一時的に3割負担となる場合があるので注意が必要です。

1割負担と3割負担ではけっこう違いがでてきます。

例えば3000単位のベッドをレンタルするとします。
単純計算で1割負担であれば毎月3000円の負担で済みますが、3割負担では12000円の負担となります。

これがすべてのサービスに対して適応されるので、通所サービスの利用料、訪問介護の利用料等など…
すべてを合わせるとひと月で数万円の差になることもあります。

こう考えると結構大きな差になりますね。
もちろん、安定して収入がある高齢者はそのままサービスを継続できるかもしれませんが、一時的に所得が増えた高齢者の場合、自己負担金額の問題でサービスを削る必要性が出てくるかもしれません。

また、福祉用具でも浴室内で使用する福祉用具やトイレ周りの福祉用具など購入対象になる物もあります。

このような場合、購入品に対しても負担割合は適応されるので購入時期に注意を払う必要も出てきます。

サービスの利用を提案する場合、このような事情も考慮すべき点だと思います。

介護保険の持続可能性~厚生労働省の取り組み~まとめ

  • 介護保険を持続可能な制度にするために自己負担金額の改定が行われている
  • 介護保険の歳入には税金、介護保険料があり、それに加えて利用者負担金額を支払ってサービスが提供される
  • 自己負担割合は高齢者の増加に伴い、改定が行われてきた
  • 自己負担割合は前年の所得額に応じて決められる
  • 自己負担3割の利用者は約12万人いるとされている
  • 自己負担1割と3割では月数万円の差になることもあり、サービス提供や提案にあたって考慮する必要がある
https://amzn.to/354ITVE
Amazon.co.jp

コメント

タイトルとURLをコピーしました