ケンリックの欲求ピラミッド-マズローの5段階欲求ピラミッドは否定されている-

みなさんこんにちは!
理学療法士のあきです。
私はこれまで総合病院、介護老人保健施設、訪問看護ステーションで理学療法士として働いてきました。

このブログではリハビリテーションのこと、制度のことを中心に発信しています。
リハビリテーションを行う上で、制度やリハビリテーションの大きな流れについて理解しておくことは重要です。

それぞれの記事は3~5分程度で読めるボリュームとなっていますので、ぜひいくつかの記事を読んで制度やリハビリテーションの流れに触れてください!

一度は耳にしたり、目にしたことがあるであろう”マズローの欲求ピラミッド”。

実はこれ、科学的には否定されているという事実をご存知でしょうか?
私も学校で習ったり、研修会でも頻繁に取り上げられるので、当たり前に受け入れてきたのですが、どうもそうではないようなのです。

この記事では私がマズローの欲求ピラミッド、それにとって代わる”ケンリックの欲求ピラミッド”について勉強したことをまとめました。

マズローの欲求ピラミッドとは?なぜ否定されているのか?

まず、こちらの図を見ていただきましょう。

マズローの5段階欲求ピラミッド

きっと一度は目にしたことがある方が多いのではないでしょうか?
マズローの欲求ピラミッドとは以下のように説明されています。

自己実現理論(じこじつげんりろん、英: Maslow’s hierarchy of needs)とは、アメリカの心理学者アブラハム・マズローが、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」と仮定し、人間の欲求を5段階の階層で理論化したものである。

wikipedia

マズローの欲求ピラミッドは自己実現理論という理論を表した図であり、人間の生命を維持するための本能的な欲求である生理的欲求、予測可能で生命や生活を脅かされないという安全の欲求、社会的に認められたいという社会的欲求と愛の欲求、尊重されたいという承認の欲求、自分の能力や可能性を最大限発揮して理想の自分になりたいという自己実現の欲求があり、それぞれの階層の欲求を満たすことで次の階層の欲求がうまれ、最終的には自己実現の欲求が出てくるという理論です。

私は養成校でも勉強した覚えがありますし、働きだしてからも医療分野、他分野問わず触れることが多い理論です。
それゆえ、当たり前に受け入れてきました。

ところが先日、こちらの本を読んでいると、「マズローの理論は否定されている」という記述がありました。

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そこで改めて調べてみると、「ケンリック」という研究者が否定していることがわかりました。

マズローの欲求ピラミッドを否定した進化心理学とは?

マズローの欲求ピラミッドは人間性心理学を提唱したマズローによって提唱されました。

人間性心理学とは…

人間性心理学にんげんせいしんりがく、英: humanistic psychology)とは、主体性・創造性・自己実現といった人間の肯定的側面を強調した心理学の潮流である。ヒューマニスティック心理学とも呼ばれる。それまで支配的であった精神分析や行動主義との間に1960年代に生まれた第三の心理学とされる。

wikipedia

一方、マズローの自己実現論を否定したケンリックは「進化心理学」という心理学を研究していました。

進化心理学とは…

進化心理学(しんかしんりがく、英語:evolutionary psychology)は、ヒトの心理メカニズムの多くは進化生物学の意味で生物学的適応であると仮定しヒトの心理を研究するアプローチのこと。適応主義心理学等と呼ばれる事もある。

wikipedia

進化心理学はざっくりとしたイメージとして、ヒトの生物であるという側面を重視し、ヒトの心理は生物として進化を遂げるための手段として働いている、という立場を取っている心理学です。

そのような立場からマズローの欲求ピラミッドをみてみると

自己実現が目的となっているが、自己実現は生物としての進化や子孫を残すことに直接関係しない

という解釈になり、マズローの自己実現論を否定する立場をとっています。

その中で、ケンリックという学者がマズローの欲求ピラミッドにとって代わる欲求ピラミッドを提唱しました。

それがケンリックの欲求ピラミッドと呼ばれるものです。

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ケンリックの欲求ピラミッドとは?マズローの欲求ピラミッドを否定した理論

それでは下の図をご覧ください。

ケンリックの欲求ピラミッド
Douglas T. Kenrick ,et al ,Renovating the Pyramid of Needs: Contemporary Extensions Built Upon Ancient Foundations ,Perspect Psychol Sci. 2010 May; 5(3): 292–314.

こちらがケンリックが提唱した新しい欲求ピラミッドです。

ケンリックの欲求ピラミッドはマズローの欲求ピラミッドと違い、それぞれの欲求が重なって表現されています。
これはそれぞれの欲求が階層式で一つを満たすと次の欲求が出てくるという形ではなく、複数の欲求が混在している状態を意味しています。

たしかに人間の欲求は複数のいろいろな階層の欲求が同時に起こることがあり、納得できます。

次に欲求の項目をみてみると

  • Parenting(子育て)
  • Mate Retention(仲間の維持)
  • Mate Acquisition(仲間の獲得)
  • Status/Esteem(地位・名誉)
  • Affiliation(所属)
  • Self-Protection(自己防衛)
  • Immediate Physiological Needs(緊急の生理的欲求)

という7つの項目が挙げられています。

もっとも高次の位置には子育てがあり、まさに生物としての進化・発展を目的とした欲求ピラミッドであることが分かります。

ケンリックの欲求ピラミッド-マズローの欲求ピラミッドは否定されている-まとめ

今回の記事では、頻繁に耳にするマズローの欲求ピラミッドが否定されケンリックの欲求ピラミッドというものが提唱されていることをご紹介しました。

私は心理学という学問はとても興味深い一方でとても難しい分野であると思っています。
なぜなら目に見えないものを研究する学問であり、科学的にひとつの正解を導き出すことは難しいと思うからです。

今回ご紹介したマズローの欲求ピラミッドもケンリックの欲求ピラミッドもそれぞれがひとつの考え方である、ということです。
どちらかが正しい、間違っているというわけではなく、捉え方によってどちらも正しく、どちらも間違っていると捉えることができます。

様々な考え方に触れ、その時どきに応じて自分が納得のいく捉え方ができるようになることで自分らしく生きていくことができるのかもしれません。

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