管理者の方々、中堅療法士の皆さま、部下や新人への教育や研修の成果をどのように測定されていますか?
私は8月から訪問看護ステーションに転職し、現在の職場では経験年数が一番上という立場になりました。
その職場ではまだまだ新入りなので、教育をする立場になる予定もなかったのですが…
とある事情で教育する立場になったため、
せっかくやるならしっかり効果判定をしたいな
という思いを持ちました。
しかし、これまで教育的立場になったこともありませんし、教育学?なんかについても勉強したことはありません。
そこでこの記事では私が教育・研修の効果判定について勉強したことをまとめていきたいと思います。
私が教育・研修の成果を測定したいと思ったきっかけ
私は8月から訪問看護ステーションに転職し、現在の職場では経験年数が一番上という立場になりました。
その職場ではまだまだ新入りなので、教育をする立場になる予定もなかったのですが…
ここで日本理学療法士協会の生涯学習制度にある、実地研修を進めていかないといけないことになりました。
実地研修の要件についていろいろ調べていると
- 内容は各施設に任せられている
- 30分を一コマとして32コマ(48時間)実施すること
- 協会への提出書類(いつどんな研修をしたか等)は特にないこと
がわかりました。
そこで若手たちとどのような形で研修を進めていくかを話し合いました。
若手たちからは
- せっかくの機会だからちゃんとやりたい
- 日常業務にすぐに活かせることをやりたい
という意見が挙がりました。
そこで研修内容を考えてとある方法でケーススタディを行うことにしました。
その方法はまたどこか別のところでまとめたいと思っていますが、個別ケースの検討から知識や思考過程を汎化して今後に活かしてほしい、と思っています。
そこでその方法が私が目標としているところにしっかり到達できるためのツールとなっているかどうかを知りたいと思いました。
なんのために教育・研修の成果を測定したいと思ったのか
では、なんのために成果を測定しなければならないと思ったのか?
それは私の性格上、
形だけにはしたくない
無駄なことはしたくない
ということにあります。
せっかく時間をかけてやるんだったら実りあることをしたいし、やったことに対する評価をしたいと思いました。
ましてや業務時間内に実施することなので、意味のないことをしてはいけないと感じる部分もあります。
そこでやっていることの成果を測定し、その効果を判定することは必要だと思ったわけです。
教育・研修の効果を測定する方法
では実際にどのように測定していけば良いのでしょうか。
まず、効果の指標について考えました。
何を指標として効果が出た、と測定するのか。
カークパトリックの4段階評価法
調べていたところ、下の図のような捉え方を見つけました。
こちらはアメリカの経済学者カークパトリック氏が1975年に提唱された評価法です。
教育・研修の対象者の評価を
Level1 研修を受けた社員のアンケートや満足度
Level2 研修を受けた社員の研修内容の定着度
Level3 研修を受けた社員の主観的・客観的な行動変容
Level4 研修を受けたことによる業績への反映
の4段階に分けて評価する、というモデルです。
こうして分けて評価していくとどの程度効果がある研修だったのかを具体的に測定できるので良いですよね。
また、2016年にはカークパトリックの息子が新・カークパトリックの4段階評価法を提唱していますので、ひとつずつ確認していきましょう。
Level1 反応
「反応」は研修直後の研修を受けた社員の反応の評価です。
研修後のアンケートや満足度調査によって測定することができます。
新・カークパトリックの4段階評価法ではその中で研修に対する主体性、業務に対する関連性への納得度の測定が重要だといわれています。
Level2 学習
「学習」では研修を通して社員が学習したことの学習到達度を評価します。
研修後の試験やレポートなどによって測定することができます。
新・カークパトリックの4段階評価法では到達度だけではなく、そこで学習したことをどの程度業務に活かそうと思ったか、活かせると思ったかが重要だといわれています。
Level3 行動
「行動」では研修をうけた社員の行動の変化を評価します。
研修を受けた社員による主観的な評価や他の社員による客観的な評価によって測定することができます。
新・カークパトリックの4段階評価法では、行動変容を促すための継続した仕組みに対しても評価することが重要だといわれています。
Level4 成果
「成果」では研修によって社員個人や組織としてどのような成果が出たか、を評価します。
組織として教育・研修を進める最終目標は組織として成長・発展することにあるはずですから、この成果の評価は最重要ポイントであるといえます。
リハビリテーション専門職の教育・研修の効果の測定
教育・研修の効果の測定について4段階に分けて評価すると分かりやすい、ということがわかりました。
では、私たちリハビリテーション専門職の教育・研修の効果の測定場面に当てはめて考えていきたいと思います。
Level1 反応
反応については上記で解説した内容と大差はないと思います。
研修を行ったあとにアンケートを実施し、研修のアンケートや満足度調査を実施し、研修を開催した側が内容として適切であったか、日常業務に活かせる内容であったと研修を受けたセラピストが感じられたかを振り返る必要があります。
どんなに良い内容でも、相手が聞く気を持ち、相手に伝わらないと意味がありません。
自己満足の研修にならないように常に反応を評価することは重要ですね。
Level2 学習
学習についてはあまり測定しているところは多くないのかもしれません。
社内での研修の後に試験やレポート提出をしている、という施設は私が知る限りありません。
理学療法士で学習の成果を測定される場といえば、日本理学療法士協会の認定・専門理学療法士制度が思い浮かびますね。
確かにしっかりと知識が定着しているのかは重要なポイントですし、日常業務に活かせる知識がしっかりと身についたかの測定は必要だと思われます。
Level3 行動
行動の変化としてはクライアントのリハビリテーションプログラム内容の変化が挙げられると思いました。
漫然としたマッサージや筋力強化、歩行練習といったプログラムの繰り返しが問題視されることがありますが、それはやる気がないのではなく、知識がないことが原因なのかもしれません。
研修を通じて新たな知識や思考過程が身につくことで、対象者の新たな課題やリハビリテーションプログラムの到達目標が明らかとなり、多彩なプログラムの立案に繋がるかもしれません。
そういった意味で、行動変容の評価としてリハビリテーションプログラム内容の変化を測定することは有用かもしれません。
Level4 成果
成果に関して、私たちの最大の成果といえば
クライアントの生活の改善
これに尽きると思います。
もちろん組織や個人としての成長や発展も重要ですし、その部分の効果判定も欠かすことはできません。
しかしその先にあるのはあくまでもクライアントの生活である、と思います。
リハビリテーション専門職の教育・研修の効果の測定の目的
つまり、私たちリハビリテーション専門職の教育・研修の目的はクライアントの生活の改善にあると思います。
ですから教育・研修の成果をカークパトリックの4段階評価法での反応、学習、行動を測定・評価することの目的はクライアントの生活の改善を目的として行うべきなのです。
今回は具体的な測定方法にまでは及びませんでしたが、教育・研修の成果を4段階に区別し測定していくことがわかりました。
それによって教育・研修が目的とすべきことも明確となりました。
次回はそれぞれの効果判定を具体的にどのような手法やツールを使っていけば良いのかについてまとめていきたいと思います。
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