令和6年には3年に一度の介護報酬改定があります。
今回は診療報酬の改定も同時にあるため、注目していかないといけません。
現在、厚生労働省の社会保障審議会にて議論が進められており、全容が明らかになりつつあります。
報酬改定は厚生労働省からのメッセージです。
今後、介護保険事業をどんな方向に進めていきたいのかを改定内容から読み取ることができるので、改定の流れをしっかり把握しておくことが重要です。
今回は主に訪問看護に関わる介護報酬改定についてまとめ、今後、訪問看護事業はどのような姿を目指していくべきなのか考えていきたいと思います。
訪問看護に関わる前回の改定内容のおさらい~令和6年度介護報酬改定に繋がる流れ~
まずは改定の流れをつかむため、前回の改定内容を簡単におさらいしておきましょう。
前回の改定のポイントは
- 退院当日の訪問看護の算定可能
- 看護体制強化加算の算定要件の緩和
- 理学療法士等の訪問の基本報酬の見直し(マイナス)
- 介護予防訪問看護の理学療法士等の訪問は1日3回以上の訪問は100分の50減算
- 介護予防訪問看護の理学療法士等の訪問は12か月超で1回あたり5単位減算
ざっくりまとめると
看護師の訪問をより手厚くし、病院退院直後から訪問看護が必要となるような医療ニーズが高い利用者を支援できる体制を整えましょう。
理学療法士等の訪問は過剰に提供されている状況にあり、サービスの適正化を図ります。
といったところでしょうか。
こちらの記事にもあるように、訪問看護ステーションからの理学療法士等の割合に制限を設けるという議論がなされたことも話題になりました。
(前回の改定ではこちらは見送りになっています。)
令和6年度の介護報酬改定の方向性
では今年の介護報酬改定について確認していきましょう。
第220回社会保障審議会介護給付費分科会にて提示された資料では、訪問看護の現状と課題、論点について以下のように整理されています。
令和5年7月にこちらの資料が提示され、これに沿って議論が進められています。
次に、令和5年12月に出された資料では、訪問看護について以下のような方向性が提示されています。
- 医療ニーズの高い訪問看護利用者が増える中で、適切かつより質の高い訪問看護を提供する観点から、専門性の高い看護師が指定訪問看護、指定介護予防訪問看護及び指定看護小規模多機能型居宅介護の実施に関する計画的な管理を行うことを評価する新たな加算を設ける。
- 要介護者等のより円滑な在宅移行を訪問看護サービスとして推進する観点から、看護師が退院・退所当日に初回訪問することを評価する新たな区分を設ける。
- ターミナルケア加算について、介護保険の訪問看護等におけるターミナルケアの内容が医療保険におけるターミナルケアと同様であることを踏まえ、評価の見直しを行う。
- 緊急時訪問看護加算について、訪問看護等における 24 時間対応体制を充実する観点から、夜間対応する看護師等の勤務環境に配慮した場合を評価する新たな区分を設ける。
- 訪問看護における 24 時間対応について、看護師等に速やかに連絡できる体制等、サービス提供体制が確保されている場合は看護師等以外の職員も利用者又は家族等からの電話連絡を受けられるよう、見直しを行う。
- 理学療法士等による訪問看護の提供実態を踏まえ、訪問看護に求められる役割に基づくサービスが提供されるようにする観点から、理学療法士等のサービス提供状況及びサービス提供体制等に係る加算の算定状況に応じ、理学療法士等の訪問における基本報酬及び 12 月を超えた場合の減算について見直しを行う。
上記の項目をみていると、やはり前回の改定と方向性としては同じだと感じ取れます。
つまり
訪問看護の本来の役割である、医療ニーズの高い利用者への訪問、その体制づくりを評価し、他サービスで同じサービスを提供しているものに関しては整理していく
といった形になっていると思われます。
特に理学療法士等の訪問に関しては、基本報酬の見直しや12か月超の訪問に対する減算についても明記されており、
今回の改定においても、理学療法士等による訪問に関しては厳しい方向での改定になることが見込まれます。
令和6年度介護報酬改定をうけて訪問看護ステーションはどのような形を目指していくべきか
私たちがこれから取り組んでいくべきことは、
改定内容に文句をいうことではなく、改定から今後求められている姿を想定し、今後の事業計画を立てていくことです。
先ほど示した通り、今回の改定からも
医療ニーズへの対応、提供サービスの適正化(特にリハビリ)
が求められていることが読み取れます。
看護師の訪問に関しては、24時間対応の体制の充実や高い医療ニーズに対応できるような知識を持った看護師の配置に対する評価や退院当日の訪問に対する評価が示されており、これまでにも増してより医療ニーズの高い利用者への対応が求められています。
例えば現在、体調管理や服薬管理、入浴介助などで訪問している事業所は、その必要性を再考し(もちろん必要な場合もあると思います)、看護師にしかできないより高度なニーズに対応していく必要があると考えられます。
また、理学療法士等の訪問に関しては引き続き報酬の減算が想定されており、リハビリメインの事業所はますます減収が予想されます。
前回の改定では介護予防訪問看護については、1日3回の訪問で単位数が100分の50に減算されるという改定があり、一定の効果があったことが示されています。
要介護者に対する訪問についても、介護予防訪問看護の前例に倣うのであれば…
厳しい改定が予想されます。
令和6年度介護報酬改定まとめ
令和6年度の介護報酬改定について、訪問看護に関する項目を確認してきました。
繰り返しますが、
報酬改定は厚生労働省からのメッセージだと思っています。
報酬の上がり下がりに一喜一憂したり、現場との乖離に対して文句をいっていてもなにも始まりません。
介護報酬改定項目や、参考資料から読み取れる、事業に対するニーズを把握しこれからの事業展開を考えていくことが大切です。
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