通所リハビリテーションにおけるリハビリテーションマネジメントへの医師の関与

平成27年度の介護報酬改定から「リハビリテーション会議」が開始されました。

平成30年度の改定まではリハビリテーション会議は医師の参加が必須であるとされており、これがネックとなってリハビリテーションマネジメントⅡを算定できない施設が多くありました。

この記事ではなぜここまで医師の関与を重要視されているのか、考えていきたいと思います。

リハビリテーションマネジメントにおける医師の重要性

リハビリテーションマネジメントにおいて医師の関与が決められている項目は大きく2つあります。

1つ目は「リハビリテーション会議への参加、医師によるリハビリテーション計画書の説明」です。

多くの場合、リハビリテーション計画書の説明はリハビリテーション専門職が実施していると思います。

これを医師が本人や家族に直接説明することを求められています。

2つ目は「医師による複数の指示」です。

リハビリテーション専門職が利用者に関与する場合、医師による指示が必要なことはご存じだと思います。

平成30年度の介護報酬改定から

事業所の医師は、リハビリテーションの実施に当たり、当該事業所の理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士に対して、利用者に対する当該リハビリテーションの目的に加えて、当該リハビリテーション開始前又は実施中の留意事項、やむを得ず当該リハビリテーションを中止する際の基準、当該リハビリテーションにおける利用者に対する負荷等のうちいずれか1以上の指示を行うこと。

リハビリテーション・個別機能訓練、栄養管理及び口腔管理の実施に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について

と医師から2つ以上の指示を行うようにと通達されました。

この項目の根拠として、平成27年度の調査でリハビリテーションの実施の有無のみの指示のものと、その他の詳細が含まれる指示が2つ以上なされていたものを比較すると、後者で有意に大きい機能回復がみられていたという調査があります。

リハビリテーションマネジメントにおける報酬面での医師の重要性

平成27年度の介護報酬改定から始まったリハビリテーションマネジメント加算Ⅱを算定するためにはリハビリテーション会議の開催、医師によるリハビリテーション計画書の説明が必須となりました。

平成28年度の調査では、リハビリテーションマネジメント加算Ⅱを算定していない理由として

「医師のリハ会議への参加が困難」が56.2%、「医師からの説明時間が確保できない」が49.6%と多くの施設が医師が参加できないことで算定できないとしていました。

この時点で医師の参加を必須としない

  • リハビリテーションマネジメント加算Ⅰ 230単位/月
  • リハビリテーションマネジメント加算Ⅱ 6月以内1020単位/月 6月以降700単位/月

と大きな差がありました。

平成30年度の改定ではリハビリテーションマネジメント加算がⅠ~Ⅳまで細分化されましたが、医師が参加するかしないかで算定が異なるリハビリテーションマネジメント加算ⅡとⅢでは以下のように単位数が大きく異なります。

  • リハビリテーションマネジメント加算(II) 6月以内 850単位/月 6月以降530単位/月
  • リハビリテーションマネジメント加算(III) 6月以内 1120単位/月 6月以降 800単位/月

また、次回の改定ではリハビリテーションマネジメント加算は(A)と(B)になり、LIFEを使用した場合では

  • リハビリテーションマネジメント加算(A)ロ 6月以内 593単位 6月超273単位
  • リハビリテーションマネジメント加算(B)ロ 6月以内 863単位 6月超543単位

と、医師の関与の有無でこれだけ大きな違いが生まれるので、経営面から考えても医師にしっかりと関与してもらうことは大きな意味があるといえます。

リハビリテーションマネジメントへの医師の関与の実際

そうはいっても先生も忙しいし、そもそもリハビリテーションにあまり理解がないからそんなにしっかり関与してもらえない…

という事業所も多いのではないでしょうか。

通所リハを運営する老健や診療所では多くの医師が施設長や院長をされており、日常の診療業務以外にも膨大な業務をかかえておられ、なかなか時間を取ってもらえないということも多いと思います。

また、私の肌温度ですが、老健では定年退職後の高齢な医師が多い印象があり、リハビリテーションへの理解があまりなく、診察を依頼しても「麻痺が治るように頑張ってリハビリを続けてくださいね」とご利用者の声掛けしてしまうような医師もおられるかと思います。

そのような場合、どのようにして医師に関与を依頼したらよいでしょうか。

まず医師が施設長や院長をされている場合、報酬面から医師の関与を打診するのが良い方法だと思います。

前項で紹介した通り、医師が関与するかしないかで報酬面でも大きな差があります。

実際にシュミレーションして数字を出して医師にプレゼンすると良いかもしれません。

医師があまりリハビリテーションに明るくない場合、実際の現場を重ねていただくほかありません。

はじめはリハビリテーション会議の前に利用者の情報の伝達、現在の目標、プログラム内容、医師から特に説明していただきたい項目の説明など入念に打ち合わせを行い、リハビリテーション会議に臨みます。

これを繰り返していくうちにリハビリテーションの考え方や終了の概念を理解していただき、しっかりと関与していただくと良いと思います。

リハビリテーションマネジメントへの医師の関与の効果

リハビリテーションマネジメントに医師が関与することで実際にどのような効果があるでしょうか?

残念ながら、数値でしめすことはできませんが、医師から計画書を説明していただくことで利用者、家族、その他関連事業所がすんなりと説明に納得されることが多いと思います。

まず、リハビリテーション会議の場に医師がいると、全員の緊張感が高まります。笑

白衣の力ってすごいですよ。

障害の予後予測の説明や、現実としてどのような対処ができるのか、終了の目安などを医師から説明していただくと、本人や家族はとてもスムーズに納得されます。

私の勤務している施設では、通所リハで医師の回診を実施しています。

回診では、私たちが聞くことができなかった身体に関する悩みなどを医師が聴取することができ、重要な情報を入手することができる場合があります。

回診で直接接していただいておくことで、リハビリテーション会議の場においても円滑に話を始めることができるようになりました。

報酬面の効果については、簡単にシュミレーションしてみましょう。

計算しやすいように登録者数100人、全員6月以内、1単位=10円とすると

リハビリテーションマネジメント加算(A)ロは6月以内では1月59300単位、リハビリテーションマネジメント加算(B)ロでは86300単位で金額に直すと

1か月で27万円、1年で324万円の差になります。

すごく大きな差ではないでしょうか?

実際には医師が関与することで先述したような効果もあり、終了を促しやすくなるため利用者が回転し、6月以内の利用者が増えるので、もっと大きな差になることが考えられます。

まとめ

  • リハビリテーションマネジメントにおいて医師の関与の重要性は調査でも示されており、報酬面でも大きな差がつけられている
  • 現実問題として、多忙や理解の不足などの理由で医師に関与してもらいにくい場合があるが、根拠を説明したり、関与してもらいやすい状況を整えることが必要である
  • 医師の関与によって利用者にも事業所にも良い効果があり、やはり医師の関与は重要である

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