みなさんこんにちは!
理学療法士のあきです。
私はこれまで総合病院、介護老人保健施設、訪問看護ステーションで理学療法士として働いてきました。
このブログではリハビリテーションのこと、制度のことを中心に発信しています。
リハビリテーションを行う上で、制度やリハビリテーションの大きな流れについて理解しておくことは重要です。
それぞれの記事は3~5分程度で読めるボリュームとなっていますので、ぜひいくつかの記事を読んで制度やリハビリテーションの流れに触れてください!
医療・介護の現場では、ヒヤリハット報告書を書く機会が多くあると思います。
「たくさんヒヤリハット報告書を出して!」
と言われることも多いと思いますが、正直、仕事量が増えてしんどいですよね…
この記事では、ヒヤリハット報告書を書くことにどんな意味があるのか、有名なハインリッヒの法則について改めて考えていきたいと思います。
ハインリッヒの法則とは?ヒヤリハットとは?
ではまず、ハインリッヒの法則、ヒヤリハットの定義についておさらいしていきましょう。
ハインリッヒの法則
ハインリッヒの法則とは下のように説明されています。
1件の重大な事故の背景には、300以上の軽微な事故が隠れている、という説明を良く耳にします。
この法則を根拠にして、ヒヤリハット報告書をたくさん挙げて重大な事故を防ぎましょう!といわれることが多くあると思います。
ヒヤリハットの定義
では、ヒヤリハットの定義についても確認しておきましょう。
ヒヤリハットの定義については、様々な定義があり、施設によって定義が違うことが多く見られます。
例えば、転倒事故について考えるとき
- 転倒したが、けがはなかった
- 躓いて転倒しそうになったが転倒しなかった
という現象が起きたとき、前者をヒヤリハットと定義している施設、後者をヒヤリハットと定義している施設で分かれると思います。
今回、ハインリッヒの法則に基づいて考えると、
前者がヒヤリハットと定義されます。
ハインリッヒの法則においては、ヒヤリハットはあくまで、事故が起こったが、無傷だった状態のことを指してい点に注意が必要です。
ヒヤリハット報告書を出すと事故の件数が減るのか?ハインリッヒの法則の正しい解釈とは?
よく「ヒヤリハット報告書をたくさん挙げて重大事故を予防しよう!」と言われると思います。
ここでひねくれ者の私は疑問を持ちました。
ヒヤリハット報告書をたくさん挙げて重大事故を防げたとすると、ヒヤリハットの数と重大事故の数の割合が変わって、ハインリッヒの法則は崩れるんじゃないの?
ハインリッヒの法則が正しいとすると、ヒヤリハットの数に対する重大事故の件数は変わらないから、ヒヤリハット報告書を挙げても重大事故の数は減らないんじゃないの?
ハインリッヒの法則はあくまで経験則による法則で、その根拠は明らかになっていませんし、因果関係ははっきりしていません。
また、先ほどハインリッヒの法則の説明であったように、ハインリッヒの法則はもともと一人の人間が起こした事故に関する割合であり、組織全体に適用される定義ではありません。
ヒヤリハットの定義についても、事故が起きたが無傷だった状態となっているので、本来の定義に沿って正しく解釈すると、事故は減らないということになります。
では、ヒヤリハット報告書なんて書いても意味がないのか?というと、決してそうではありません。
ただ、ハインリッヒの法則の解釈については、やや誤った解釈が広がっているように感じます。
ヒヤリハット報告書をしっかり挙げているのに事故が減らない!
ヒヤリハットの経験が活かされず、重大事故が起こってしまった!
事故の件数に対してヒヤリハット報告書が少なすぎる!
というのは、ハインリッヒの法則を誤って解釈した状態だといえます。
ハインリッヒの法則を正しく解釈してヒヤリハット報告書を活用しよう
では、ヒヤリハット報告書をどのように活用していけば良いのでしょうか?
まず、ハインリッヒの法則は先ほども解説したように、一人の人間が起こした事故に対しての割合の法則であり、組織全体に適用されるものではありません。
しかし、ヒヤリハット報告書の目的は、事故や事故になりそうになった事象を組織全体で共有することにあるのではないでしょうか?
つまり、ヒヤリハット報告書とハインリッヒの法則はそもそも全く違う次元での話であり、ヒヤリハット報告書と事故の件数の関係にハインリッヒの法則を適用することはできないと考えられます。
では、ヒヤリハット報告書は意味がないのか?
というと、そんなことはありません。
ヒヤリハット報告書を書く目的は、事故や事故に繋がりそうになった事象を組織全体で共有することにあると思います。
事故の事例や、事故に繋がりそうになった事象を全体で共有することで
「こんな場面は気をつけないといけないな。」
「こんなことが起こらないようにこんな仕組みが必要だな」
といった対策をうてるようになります。
その結果、組織全体の事故発生件数は減る可能性も考えられます。
ただし、ここにハインリッヒの法則は関係ありません。
ハインリッヒの法則に基づいた事故の件数や分類に惑わされず、どんどん情報を共有する、という感覚でヒヤリハット報告書を挙げることが大切だと考えられます。
ヒヤリハットとハインリッヒの法則について再考する
いずれにしても事故の件数は少ない方が良いし、重大事故が起こらないに越したことはありません。
ヒヤリハット報告書はあくまで情報の共有が目的であると認識し、報告するハードルを下げることも大切だと考えられます。
ヒヤリハット報告書は事故の反省文ではなく、情報共有ツールです。
その認識を組織全体で統一し、どんどん事故の状況を共有することでより安全な支援を目指していきたいですね!
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