先日、こんなツイートをして同業者に対して質問させていただきました。
想像以上にたくさんの情報をいただき、反響がありました。
その中で
通所リハ・訪問リハの卒業、終了とはなんだろう…
と改めて考える機会がありましたので、今回は通所リハ・訪問リハの終了についてまとめたいと思います。
通所リハ・訪問リハは終了を前提としたサービスでありますが、現実的には終了が難しいケースもあります。
そのようなケースに関してもどのように考えていくべきか、私なりの考えをまとめていきます。
リハビリテーションは終了を前提としたプロセスである
まず、
リハビリテーションは半永久的に提供し続けるものではなく、終了を見据えて提供するべき
だと思います。
国際連合では
リハビリテーションは身体的、精神的、且つ又社会的に最も適した機能水準の達成を可能とすることによって、各個人が自らの人生を変革していくための手段を提供していく事を目指し、かつ、時間を限定したプロセスである。
障害者に関する世界行動計画,1982
と定義しています。
また、リハビリテーションマネジメント加算等に関する基本的な考え方並びにリハビリテーション計画書等の事務処理手順及び様式例の提示についてでは、特記事項に
事業所の医師が利用者に対して3月以上のリハビリテーションの継続利用が必要と判断する場合には、リハビリテーションの継続利用が必要な理由、その他介護サービスの併用と移行の見通しを記載すること
とされており、3月以上継続利用が必要と判断するためにはリハビリテーションを継続する必要がある理由を改めて記載することになっており、言い換えれば
特別にリハビリテーションを継続する理由がない場合、終了しなければならない
ということを意味しています。
また、来年度からの介護報酬では廃止されますが、平成27年度から始まった生活行為向上リハビリテーション実施加算では、
開始月から起算して3月以内の期間に行われた場合2000単位/月
開始月から起算して3月超6月以内の期間に行われた場合 1000単位/月
ただし、当該加算を算定後に通所リハビリテーションを継続利用する場合は、翌月から6月間に限り1日につき所定単位数の100分の15に相当する単位数を所定単位数から減算する
とされており、
終了しないと事業所は減算される制度になっており、
リハビリテーションの終了を促す内容となっています。
制度上の理由だけでなく、そもそもリハビリテーションとは
単なる機能回復訓練だけではなく、心身に障害を持つ人々の全人的復権を理念として、潜在する能力を最大限に発揮させ、日常生活の活動を高め、家庭や社会への参加を可能にし、その自立を促すものである。
厚生労働省老健局内 高齢者リハビリテーション研究会
「高齢者リハビリテーションのあるべき方向」,2003
とされているので、終了を見据えずに提供することはあり得ないと思います。
しかし、現実には
- リハビリをずっと続けたい
- リハビリをしているから今の身体機能が維持できている
と考える当事者、家族、専門職も多いのではないでしょうか。
リハビリテーションはしてもらうものではない
そのような考えを持っておられる方の多くは
リハビリテーションはしてもらうもの
という考えがあるのではないでしょうか。
リハビリテーションといえば、リハビリ室に行って
- 動かない関節を動かして”もらう”
- 足が痛いからマッサージして”もらう”
- ふらふらして歩けないから歩かせて”もらう”
そんなイメージを持たれていませんか?
これはリハビリテーションの認識としてはあまり正しいとは言えません。
もちろん、そのような他動的に身体に働きかけるリハビリテーションが必要な時期もあります。
しかし、リハビリテーションの最終的な目標は
自立支援
であると思います。
自立支援である以上、いつまでもして”もらう”ではいけません。
リハビリテーションから離れ、クライエントから離れる努力を双方にしなければならないと思います。
通所リハ・訪問リハの終了
少し話が大きくなってしまいましたが、話を戻します。
制度上、通所リハ・訪問リハは終了を前提としたサービスであると位置づけられています。
では、終了の時期はどうやって決めるか。
その答えのひとつが
目標を達成すること
になります。
通所リハ・訪問リハの利用を開始するときやリハビリテーション会議でリハビリテーションの目標を決め、その目標を達成できたら終了、という流れになります。
この目標設定が難しく、実現可能な範囲で、双方が合意できる目標である必要があります。
極端な例をいえば、「空を飛べるようになりたい」という目標は成り立たないというわけです。
また、目標はリハビリテーション計画書の様式より「活動と参加」に繋がるものを目標として立てることが必要です。
「歩けるようになりたい」
ではなく
「〇〇するために歩けるようになりたい」
「歩けるようになって○○したい」
というような目標設定を行います。
もしかしたらたとえ歩行が自立しなくても、他の手段で達成できる目標かもしれません。
リハビリテーションは身体機能だけではなく、環境調整や家族の介護指導などにも関わり、利用者が本当に目標にしていることを達成できるように支援していく必要があります。
しかし、現実的にはうまく終了に繋がっていないケースが多いです。
リハビリテーションの目標が達成できない場合
目標を設定し、リハビリテーションに取り組んでも思い通りに目標が達成できない場合も当然あります。
そのような場合でも、通所リハ・訪問リハの終了を検討する必要があります。
通所リハ・訪問リハはあくまで「通過施設」であり、終了を前提としたサービスなのです。
では、目標が達成できなかった場合はどこで終了とするのでしょうか。
この場合は「これ以上の改善が見込めない場合(維持段階)」となります。
少々酷な言い回しになりますが、身体機能の改善が停滞し、維持段階に入ることは当然考えられます。
麻痺などが残存し、認知機能障害なども重なり、改善が見込めなくなるケースもあります。
現実問題として、介護保険という国民から集めたお金を使っている以上、合理的にサービスを提供する必要があります。
そのような観点からも、維持段階になったり、自宅での生活が継続可能な状態で、現状に満足されている場合は終了していくことが必要です。
もちろん利用者か家族にそんな説明はしませんが、現実問題として考えないといけないことだと思います。
それでもリハビリテーションを継続したい場合
そうはいっても、希望を捨てられず、リハビリテーションを継続したいとおっしゃる利用者やご家族も当然おられますし、当然の考えだと思います。
私はそのような方のために「自費リハビリ」があると思っています。
要は健常者がスポーツジムに通ったり、ランニングをするのと同じ感覚です。
日常生活を送るためにムキムキの筋肉をつけたり、マラソンを走れる必要はないわけです。
でも、自分でお金を払って体を鍛えています。
身体に障害があったとしても、その権利は当然あります。
自分でお金を払って歩く練習をしたり、やりたいリハビリをすることは悪いことではなく、必要とされることだと思います。
まとめ
- リハビリテーションは時間を限定したプロセスであり、特別な理由がない限り、終了しなければならない。
- リハビリテーションは自立支援のために提供されるものであり、して”もらう”ものではない。
- 通所リハ・訪問リハでは実現可能な範囲で、双方が合意できる目標を達成することが終了の目安となる
- 目標が達成できない場合でも、維持段階になったり、自宅での生活が継続可能な状態で、現状に満足されている場合は終了していくことが必要
- それでもリハビリを継続したいというニーズは当然あるが、保険制度の持続性を考えたとき、必ずどこかで線引きが必要となると考えられる。そこで自費リハビリのニーズがあると考える。
いずれにしても大切なことは
利用者、関係者としっかりとした関係性を築き、
双方が納得できる目標を設定することが重要だと思います。
そのために私たちサービス提供側は自己研鑽を続け、
より良いサービスを提供し続けられるように努めないといけませんね。
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