コロナ禍を経て、世界は一変したように感じます。
よく言われるのが
IT化がコロナによって5~10年前倒しで進んだ
といわれています。
たしかにリモートワーク、オンライン会議、キャッシュレス化などぐんと進歩したことは実感できます。
では私たちの現場での仕事はどうでしょうか?
IT化の流れに置いていかれていないでしょうか?
今回の記事では、IT業界で顕著である「限界費用ゼロ社会」について勉強したので私たちの業界にも適応できる部分を探りながらご紹介したいと思います。
限界費用ゼロ社会とは?
限界費用ゼロ社会を理解するために、まず限界費用とはなにか?どうすればゼロになるのか?を理解しておく必要があります。
限界費用とは?
まず、限界費用について説明していきます。
限界費用とは…
例えば、診療所で一日に診る患者数を増やしたいとします。
診ることができる患者数を増やすためには、人手を増やさなければいけません。
つまり、患者数を増やすためには人件費を追加でかけないといけません。
ただし、家賃やその他光熱費などはほとんど変わりません。
この場合では追加分の人件費が限界費用となります。
この限界費用はその後、患者数を増やす場合にも必要となってきますね。
限界費用がゼロになる場合とは?
では、タイトルになっている限界費用ゼロとはどのような場合に実現するのでしょうか?
一番わかりやすいのがIT業界だと思います。
例えば、あなたがYouTubeチャンネルを立ち上げ、動画を配信して広告収入を得るとします。
はじめは動画撮影の機材を揃えたり、動画を撮影するための光熱費、自分の人件費がかかります。
では、その動画がヒットして閲覧者数が増え、広告収入が増えたらどうでしょうか?
閲覧者数が増え、収入が増えたので、生産性は向上したといえます。
では、生産性が向上した分、増えた費用は?
答えはほとんどゼロに近いですね。
同じ手間と時間と機材を使って撮影した動画がもたらす収入が増えただけなので、追加で費用はかかっていません。
これが、限界費用ゼロの世界です!
指数関数的な成長がもたらされる
限界費用ゼロを実現できると、指数関数的な成長が見込めます。
どういうことかというと…
ここではカーナビを例に挙げて説明します。
カーナビに搭載されているGPSはもともと軍事用の技術でとても高価な物でした。
GPSを自動車に搭載するのに、はじめは多くの費用がかかり、あまり利益が上がりません。
しかし、ひとたび搭載するとその利便性に人々が気づき、どんどん搭載する車が増えていきました。
また、コンピュータ技術も進歩し、コンピュータにかかるコストも下がっていきました。
するとGPSを搭載するのにかかる費用はどうなるでしょうか?
答えは簡単、搭載する車が増えるほどかかる費用は下がっていきます。
つまり、GPSを搭載する車が増えれば増えるほど、限界費用はゼロに近づいていき、利益は増えていくのです。
そしてその利益の増え方は下の図のように増えていきます。
限界費用ゼロ社会になると何が起こる?
限界費用が下がるということは、売上が上がると利益は増え、かかるコストは下がる。
すごく理想的なビジネスに感じます。
では限界費用ゼロ社会は社会にどのような影響を与えるのでしょうか?
限界費用ゼロが社会にもたらすこと
限界費用がゼロに近づくと、先ほど説明したように利益が指数関数的に増えていきます。
つまり、それだけ会社が儲かる、ということです。
ですから、会社はできるだけ限界費用ゼロを目指したい、と思うことは自然なことだと思います。
限界費用がゼロになる場合は?
先ほどの例にも挙げたように、IT業界では限界費用が限りなくゼロに近づきます。
一方で売上が人手や物によってもたらされている場合、限界費用がゼロになることはありません。
生産性を上げようと思うと人手や物に対して新たな費用がかかるからです。
ということは企業はどちらで利益を上げることを考えるでしょうか?
限界費用ゼロ社会で得する人、損する人
当然、経営側の考え方としては
限界費用がより低い方法で生産性を上げる
ことを選択するでしょう。
ということは、限界費用がかさむものは排除されていくことになります。
コロナ禍において、物ごとのIT化が加速しました。
様々な物がIT化され、様々なサービスの限界費用が下がっているのではないかと思います。
例えば、研修を開催するとします。
これまでの対面型の研修では、受講者の人数が増えるにしたがって
会場規模
設営スタッフ
などが限界費用としてかかります。
しかし、オンラインでの研修ではどうでしょうか?
会場は変更する必要はないし、スタッフ数も対面型よりも少なく済むのではないかと思います。
録画しておけば、編集の手間はかかりますが、一度の研修でより多くの受講者に研修を受けてもらうことができます。
これによって研修の主催者側はより大きな利益を得ることができます。
一方で対面で必要であったはずのスタッフは仕事がなくなる、ということですし、大きな会場は利用されなくなってしまいました。
このようなことが様々なところで起きているのではないかと思います。
これからはより生産性というものを意識していく必要がある社会になっているということではないでしょうか。
医療・介護分野で限界費用ゼロは目指せるのか?
では私たちが働いている分野である、医療・介護分野で限界費用ゼロは目指せるのでしょうか?
医療・介護分野は人件費率が高いことが特徴です。
つまり、IT分野のような限界費用ゼロを実現することは難しいと思われます。
では限界費用について考えなくても良いのか?
というとそんなことはありません。
医療・介護分野での限界費用について考えていきましょう。
医療・介護分野の限界費用とは?
先ほども述べたように、医療・介護分野は人件費率が高い業界です。
多くのケースで運営基準の中に人員基準があり、〇人にサービスを提供するためには〇人のスタッフが必要ですよ、と決められています。
また、人員基準は最低限の基準であり、人員基準以上のスタッフを確保している場合が多いのではないかと思います。
つまり、医療・介護分野での限界費用の高い割合を人件費がしめているといえると思います。
医療・介護分野と限界費用の捉え方
では私たちが限界費用についてどのようなことを考えるべきでしょうか?
それは
一人当たりの生産性を上げることです。
先ほど述べたように、どうしても人件費を増やさないと利益が上がらない構造になっています。
そして多くの場合、人員基準以上のスタッフを確保して事業を運営しています。
ここで、一人当たりの生産性があがるとどうなるでしょうか?
今まで1の働きをしていたスタッフが1.25の働きをするとどうなるか?
5人の人員が必要だったところが4人で済むようになります。
15単位しか取れなかったスタッフが18単位取れるようになったらどうでしょうか?
6人で90単位取っていたところが、5人で同じ単位数を取れるようになりました。
このように一人当たりの生産性を上げることで限界費用を下げることができます。
経営側はこのような状態をつくるために、ITの導入、業務の効率化を図ろうとします。
一方、労働者に対してはより生産性の高いスタッフを集めるようになるのではないでしょうか?
もしいつまでも15単位しかとれないままだとすると、経営側からすると・・・
私たちの仕事はどうなる?限界費用ゼロ社会への道
ここまで限界費用という視点から生産性や利益について考えてきました。
医療・介護業界でもIT化や業務の効率化が叫ばれています。
新しいものを取り入れるのに抵抗してしまうことがありますが、様々な業界で限界費用が下がっている現代において、そのような抵抗を続けることは得策なのでしょうか?
少しずつでもしっかり新しいテクノロジーを取り入れたり、業務の効率化を図り、組織の生産性向上に貢献していく必要があります。
そこに常々いわれている、人材不足の解決のヒントが隠されているのかもしれません。
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