みなさんこんにちは!
理学療法士のあきです。
私はこれまで総合病院、介護老人保健施設、訪問看護ステーションで理学療法士として働いてきました。
このブログではリハビリテーションのこと、制度のことを中心に発信しています。
リハビリテーションを行う上で、制度やリハビリテーションの大きな流れについて理解しておくことは重要です。
それぞれの記事は3~5分程度で読めるボリュームとなっていますので、ぜひいくつかの記事を読んで制度やリハビリテーションの流れに触れてください!
私たち理学療法士の本分といってもいい、運動療法。
ほとんどの理学療法士、リハビリテーション専門職がクライアントへの支援方法として運動療法を選択する場面があると思います。
下肢挙上運動を〇〇回
膝伸展運動を〇〇回
スクワットを〇〇回
そんな風に運動量を提示して取り組んでいただく場面は多いですよね。
ところでその運動、必要な運動量に達しているでしょうか?
安全策を取りすぎて運動量が足りず、結局効果の低い運動になってしまってはいませんか?
そうはいっても在宅で運動負荷試験もできないし…
という場面は多いと思います。
そこで今回は高齢者の必要な運動量、その決定方法について検討していきたいと思います!
高齢者に必要な運動量とは?まずは用語の整理から
まずは少し用語を整理しておきたいと思います。
運動とは
まず運動とはそもそもどういう意味でしょうか。
厚生労働省のe-ヘルスネットでは以下のように定義されています。
つまり、運動とは意識して健康のために取り組む活動のこと、ということですね。
身体活動とは
運動の定義の中に”身体活動”というワードが出てきました。
では身体活動とはどのような意味なのでしょうか?
同じくe-ヘルスネットでは以下のように定義されています。
つまり身体活動とは、寝たり座ったりしている以外に活動している状態のことを指します。
運動も身体活動に含まれていますので、
身体活動=運動+生活活動
とまとめることができます。
高齢者の運動量・活動量を決めるうえで有効限界と活動限界という考え方
高齢者に対する運動量を決定する上で
有効限界と活動限界
ということを考慮しなくてはいけません。
有効限界…
これ以下では運動による効果が見込めないという下限
安全限界…
これ以上の運動には危険が伴うという運動強度や運動量の上限
有効限界と安全限界を図で表すと以下の図のように表されます。
運動量・活動量とはこの有効限界と安全限界の間にあれば適切な負荷量がかけられているということになります。
図で示されているとおり、高齢者や患者は呼吸・循環機能が低下している場合が多く、適切な負荷量の範囲が狭くなっていることが考えられます。
高齢者に必要な運動量・活動量の決定方法
では実際にどのように高齢者の運動量・活動量を決めていけば良いのでしょうか。
運動量・活動量の基準値はあるのか
まず、運動量・活動量の基準をみていきましょう。
第3回運動基準・運動指針の改定に関する検討会において高齢者の運動量の基準を以下のように定めています。
どんな運動・活動でも良いからとにかく40分以上動きましょう!
ということですね。
予測値を用いる
予測値の代表的なものとして
カルボーネン法
があります。
カルボーネン法は計算式を用いて目標運動強度の目安となる心拍数を算出する方法で、その計算式は
(220-年齢)-安静時心拍数)×運動強度(%)+安静時心拍数
という計算式になっています。
例えば70歳で安静時心拍60回/分のクライアントに50%程度の強度の運動を実施するときには
(220-70)-60)×0.5(50%)+60=105
となり、運動時の脈拍数を105回/分を目標にすればよいことがわかります。
ただし、年齢で目標心拍数が決定されるため、循環器系の疾患がある方に対しては注意が必要です。
高齢者の運動量・活動量に対する考え方
それでは実際の高齢者の運動量・活動量に対してどのように考え、運動量や活動量を確保していけば良いのかを考えていきましょう。
平均身体活動量を高めることが重要
九州大学が2020年に発表した論文では、1回あたりの運動持続時間を延ばすのではなく、1日あたりの平均時間が長くなるほど要介護化リスクが低くなることが明らかになったと発表しています。
つまり、意識的に取り組む運動を何日か行うよりも、日々の生活の中でいかに身体活動の機会を増やせるかが重要だといえます。
平均身体活動量を増やすとはどういうことか?
図にすると以下のように表すことができます。
青色が定期的な運動を意識して行うが、他の日はあまり動かない場合
黄色が定期的に少しだけ運動し、他の日にも少しずつ活動していた場合です。
1週間の活動量を足してみると右側のように黄色の方が活動量が多いことが分かります。
毎日の身体活動をいかに増やしていけるかが高齢者の運動量・活動量を確保するためには重要であることが分かります。
高齢者に必要な運動量・活動量まとめ
この記事では高齢者に焦点を当てて運動量・活動量について考えてきました。
仕事や子育てなど、高齢になると社会的な役割が減ってしまったり、身体的な理由で活動量が減少してしまうことは少なくありません。
その中で以下に運動量・活動量を維持して健康でい続けてもらうか、を考えたときに
この記事で考えてきたように
1回の運動量を増やすのではなく、日々の生活の活動量をトータルで増やしていくことが重要
だということがいえると思います。
そのために私たちができることはなにか?
それは、適切な運動強度を決定し、運動に取り組んでいただくことに加えて
日々の生活でできることを増やし、役割を担っていただいて社会参加の機会を増やし、いきいきと生活していただけるような支援や環境づくりが重要ではないでしょうか。
そんなことを踏まえた上でリハビリテーションプログラムを立案していけると良いのではと思います。
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